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HAPPINESS NOTE

都市と自然が交差するライフスタイル日記

コミュニティーに関する、ある提案書

150510yoga@inage

今年で21年目をむかえた我が事務所。ずっとmacのお世話になっている。いやmacのお世話をしているといった方が正しいかも。
最近動きが悪くなってきたので、HDの中身を整理した。すると、HDの奧にしまい込んだ企画書が出るわ出るわ。読み返さずにごみ箱にポイするのが基本なのだろうが、つい読み返してしまった中に捨てるには惜しい原稿があった。公表するほどのものでもないが、コミュニティーに興味ある人には参考になるかもと思い、修正せずにアップします。
この原稿は、竣工後3年経ったあるマンション管理組合から夏祭りの協力依頼があった際に、管理組合宛に書いたお手紙。

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 現代都市社会におけるコミュニティーへの期待は、年々高まっているように思われます。同時に、人々の価値観、ライフスタイルの多様化は、コミュニティーへのニーズも多様化させ、コミュニティー形成の難しさをあらためて浮き彫りにさせています。都市社会の象徴的な住居形態であるマンションは、その傾向が特に顕著にあらわれてきます。ある統計によると「みんなで一緒に何かをする」という地縁・血縁的なコミュニティーを肯定する人は少なく、「価値観や趣味の合う仲間を見つけたい」「ボランティアなど社会貢献的な活動」などテーマのあるコミュニティーを求める傾向にあります。「テーマコミュニティ」もしくは「小さなコミュニティー」を基盤に置いた地域コミュニティーを形成していく、という観点がマンションコミュニティーを考える場合に覚えておきたいキーワードとなります。

 また、遙か昔から、コミュニティーは存在しましたが、自然発生的に形成されるものではありませんでした。コミュニティー形成には常に目的があった事が知られています。そして、ある特定地域の人々がその目的を共有し、自分なりにその意味を見いだすことで、コミュニティーのメンバーになっていくわけです。目的も防犯・防災といった事だけではなく、生産的、経済的、文化的、教育的、軍事的など様々な側面を持っていました。
 個とコミュニティーの関係は一方通行ではなく、相互にプラスの影響をおよぼしあえる関係でなければなりません。しかし現実はコミュニティー形成を急ぐあまり、「コミュニティー」という言葉だけがひとり歩きをして、「何のためにコミュニティーが必要なのか」「コミュニティーは地域の人々の生活にどんなメリットを及ぼすのか」という視点が置き去りにされていることが少なくありません。コミュニティーには私たちの生活を安全でより豊かにする多大な可能性が秘められています。その可能性を存分に引き出せるコミュニティークラブであってほしいと願います。

さて、あらためて、「コミュニティーって本当に必要なのでしょうか?」
こんなことを言うと、「防災防犯のために必要なのは当然だ!」とお叱りの声が返ってきそうですが、では、この二つの目的「防犯」「防災」を抜きに考えてみてください。意外と答えられないのではないでしょうか。まちやは、この二つだけに頼ってコミュニティーを築いていこうとするのは、都市社会では若干無理があるように思うのです。特にセキュリティの行き届いている事が前提のマンションではなおさらです。一度、コミュニティーありきではなく、この街をどのような街にしたいのか、という明確なビジョンをみなで話し合い、その街づくりを実現するために必要とされるコミュニティーのカタチとはどのようなものなのかを、じっくりと考えることは重要です。その過程のないコミュニティー活動は、“単なるイベントクラブ”になっているケースがとても多いように思います。イベントクラブは、子どもが小学校を卒業する頃にはお役ご免を迎えます。シニアもDINKSも単身者も、さらにいえば中高生も帰属意識を持てるコミュニティークラブでありたいものです。

 現在、貴マンションで実施されているコミュニティーイベントは、マンションで専有部分以外には行き場のない人が多い入居後2〜3年のコミュニティー形成にとって有益な活動だと思われます。
 4年〜6年目のマンションのコミュニティー活動において見られる傾向として、参加者の固定化と企画のマンネリ化、その結果、コミュニティー活動自体がルーティンワークになってしまい運営委員の活動意欲の低下につながっていきます。これを防ぐためには、思い切ってこれまでの活動を見直し、これまで活動に参加したことのない人々が関心を持つような企画を大胆に取り入れていく方法があります。
 たとえば、70万円の予算があれば、1回7万円で出来る小イベント(参加人数20〜50人)を、世代や内容を分けて年間10回開催することで、新しい出会いのきっかけを作ることにつながります。 また、キッズルームを利用した絵本の読み聞かせや、シアタールームを利用した映画上映会などは低予算で毎月開催できるイベントです。こういう企画は、開始当初は集客にばらつきがあるものですが、毎月定期的に開催することで口コミ等を通して必ず参加者が増えていきます。このような1〜2ヶ月単位で定期的に開催されるイベントは、生活リズムの中に組み込まれ、その人(参加者)にとってなくてはならない時間になっていきます。「個とコミュニティー」が良好な関係を築くわかりやすい例といえるでしょう。

パエリア002

 たまには大人の方々にくつろいでいただくために、スペインのジャンボパエリア(100人分)を囲んだランチパーティーはいかがでしょうか。サングリアやワインを片手に木陰でゆっくりすれば「こんなコミュニティーは素敵だな」と思ってくれる方もいるはずです。シニアの方には寄席に人気があります。お年寄りの笑い声をマンションの共用施設で聞くと、とても幸せな気持ちになれます。
 コミュニティーをさらに活発にしていくためには、地域社会との関係を築いていくこともおすすめです。コミュニティーは“出会いの刺激”がエネルギー源となって動いていく側面があるのですが、コミュニティー内部だけではその刺激が十分に得られない時期がいつか必ず訪れます。いわば「倦怠期」ですね。その際にコミュニティーの外から吹いてくる新しい風は、コミュニティーの人々を心地よく刺激してくれるはずです。

 地域とつながるメリットはそれだけではありません。274世帯だけではスケール的・予算的に出来ないことを、地域の人々も巻き込むことで実現可能になってきます。例えばフリーマーケットなどもマンション内だけではやや物足りない結果になろうかと思いますが、地域の有志と共同で実施することでとても楽しいお祭りに成長していくでしょう。音楽会も地域のコンサートとして位置づけ、外部からも積極的に集客することで“一目置かれる存在”に貴マンションがなっていくものと思われます。“一目置かれる”活動は音楽会だけではありませんが、地域の人々に「あそこのマンションに住んでみたい」と思わせることは、マンションの資産価値の維持・向上のためにとても重要な視点です。マンションの資産価値に対しては様々な不動産的評価基準がありますが、地価の上昇が期待できない現在、最も評価すべき基準は、住んでいる方の「ずっとここに住み続けたい」という思いと、地域の人々の「あそこに住んでみたい」という思いの大きさではないでしょうか。いずれにせよ、コミュニティー活動はマンションの資産価値の維持・向上に不可欠な要因になってきている、と言えるでしょう。

 最後に、コミュニティー活動とは、街(マンション)の可能性を拡げていくための、魔法の道具だと私は考えています。街づくりの夢を描いて、コミュニティーの力で自分たちの生活を変えていく。ある意味、ゲームを楽しむ感覚がコミュニティーの運営を楽しく持続できるものにしてくれるように思います。そのような活動をご一緒できるのであれば、ぜひ協力させていただきたいと考えております。
 なお、今回は企画コンペというスタイルではございましたが、皆様のコミュニティークラブの運営状況、活動上の課題、参加者の声、潜在ニーズ、居住者の世代構成、子どもの年齢分布、などをよく理解していない中で、イベントありきの無責任な企画を立てることは出来ませんでした。私どもの活動理念をご理解いただければ幸いです。
 とはいえ、今回のコンペ仕様書で上げられている3つのイベントに対して見積もりをしました。皆さんと協働するなかで予算の調整は可能だと思います。



(有)デザインショップまちや 
代表取締役 来嶋洋介
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